重賞回想

 前日のやや重が朝の時点では残っていたのもあって、この日の芝はちょっと時計のかかる馬場。道営から移籍したモエレソーブラッズがハナに立って、1000m通過が61.2秒のペースで2:01.5のタイム。準メーンのアクアマリンSが1:34.4。ペースを握ったのが外人のデムーロで、ラップは、

12.4-11.3-12.5-12.6-12.4-12.0-12.7-12.3-11.7-11.6

 若干緩む部分はあるが極端なところはない全体的に締まった流れ、こうなると息のつけなかった先行勢には厳しく、掲示板は道中後方から5番内の馬が独占の結果。ちょうど10頭立てで、前と後ろが綺麗に入れ替わった

 アドマイヤムーンサクラメガワンダーを除けば最後方追走から、直線では内で抜け出したグロリアスウィークと馬体を合わせて2頭で伸びてきた。坂を上ったあたり、騎手が右ムチを入れたところで大きく外にヨレたのはお行儀の悪い競馬だったが、手綱を持ち直してからは更に一伸び。鞍上が馬の癖を知った? 事は本番に向けてなによりの結果で、共同通信杯と今回で2歳の東西王者を負かし、皐月賞に向けてアタマひとつリードした。あとは肝心なところで出遅れ癖が出ないことを望むのみ。

 2着のグロリアスウィークは、個人的な話、道中後方だったのでやきもきしながら眺めていたけれど、結果的にはそれが良かった、さすが関東リーディングジョッキーはダテでない。馬もクセモノだが、たしかに走る。上に書いたような見解で、勝ち馬とは着差以上の力の差が感じられるけれど、多頭数の皐月賞で必要とされる自在性は、過去の戦績から眺めるとこちらが上。逆転は難しいかもしれないが、鞍上次第では本番も楽しみな馬だろう。

 ディープエアーは札幌で藤田騎手が結果を出した馬、中央では池添騎手で一息の競馬が続いていたが、豪腕の内田騎手に代わって3着まで持ってきた。2着と3馬身差の結果が示すように、クラシックでの期待はチョット薄い印象。

 人気を裏切ったサクラメガワンダーは、スタートダッシュがつかずに勝負を放棄した? 競馬。4着も展開の利があっての事に思える。本番に向けて、との参考にはまったくならないが、こういう競馬をされると見ていて不満が残る。まあ、マトモに走られてたら馬券は外れてたっぽいけど……

 スーパーホーネットの朝日杯2着は騎手の賜物だろう。

   *

 弥生賞と話は変わりますが、アクアマリンSが、

12.6-11.8-11.6-11.6-11.4-11.6-11.6-12.2(1:34.4)

 土曜9Rの黄梅賞でマイネルスケルツィが、

12.8-11.7-11.6-11.7-11.8-11.6-11.4-12.0(1:34.6)

 前日がやや重発表だったことを考えると、素晴らしい時計。2着を3馬身、3着はさらに4馬身ちぎったスケルツィの強さも際立ちますが、全体的に3歳戦の時計は早く、今年はハイレベルな世代との話が聞こえてくるのもうなずけます。

 10Rの心斎橋S(古馬1600万芝1200m)の時計が1:09.9、阪神は洋芝の生育が良い事もあってか、重い馬場になっている。チューリップ賞の勝ち時計1:36.5は近年にないタイムだが、馬場差(1秒はかかる)を考えると特に遅いとも思えず、価値は例年並といってよいのではないか。

 アドマイヤキッスは、札幌の未勝利戦での圧勝から半年ぶりの競馬で不安に思っていたけれど、終わってみれば見事な勝利。時計のかかる馬場が有利に働いたこともあったが、鞍上の好騎乗も光った。一叩きした本番は上積みが見込めるはずで、桜に向けた視界は開けている。

 札幌1800mのOPで結果を残した馬が桜路線で活躍する過去の例がある。キッスの勝ち星は未勝利戦までだが、時計と圧勝ぶりは際立っていたことから、今後は札幌実績組の例に並べていいだろう。

 2着シェルズレイは気性があまりヨロシくないらしくムラな戦績だが、昨年末に勝った2歳500万戦の時計1:35.7は、同日の古馬OPファイナルSの1:35.8とほぼ同じ。ファイナルSはスローに流れたから比較してそのまま強さを表せるとはいえないが、JFを3着のフサイチパンドラが2歳500万でも3着、レースのレベルは世代トップと互角、かそれ以上とも言えた。気性がナニなので多頭数の本番では不安だが、思い切った競馬をすればあるいは、と思える能力は持っている。

 ウインシンシアは直線3着まで伸びたが、上位2頭とは差のある競馬。本番でどうこう言うのはちょっと酷か。

 テイエムプリキュアは道中揉まれたり、直線で前を塞がれたりと散々な競馬だが、勝ち馬と0.6秒差というのはちょっと気になる着差ではあった。JFは差して勝ったが、道悪をものともしない(だろう)馬、当時の戦法には急雨の利もあった。切れないので本来は先行したほうが良いはずで、乗り馴れた鞍上に戻るのはプラスではあるけれど……、前途にチョット陰りが見えなくもない。が、暗雲が本番の日にたちこめていたなら文句なく買いたい。


 開幕週の中京競馬場は、例年より2000mで1秒くらい早い時計で決着している。洋芝の生育があまり良くないとの話から推測すると、野芝主体の良馬場なのだろう。高松宮記念の頃には芝が荒れること必定だが、早い時計に対応できない馬には厳しい事になるかもしれない。勝ち時計の推移には注目していきたい。

 中京記念は、

12.0-10.8-10.7-12.1-12.1-12.0-11.9-12.2-11.8-12.6

 で1:58.2。全体時計よりラップが厳しかった、どこにも息が入らない。タップダンスシチーなら乗り越えられたろうが、コスモオースティンにはちょっと酷。単騎ではあったが、2番手とはさして差のない逃げで、前を行った馬はこのペースに巻き込まれて最後失速した。勝ち馬は道中後方2番手追走、その前に2着、3着馬、の位置取りだった。展開と上位の顔ぶれを眺めると、2000mより短い距離の適性が必要とされたレースであったように思える。

 マチカネオーラアメジストS勝ちからの参戦、外を回しはしたが、先に抜け出したローゼンクロイツを目標に溜めに溜めて競馬を進めた川田騎手の判断? はお見事。今回2000mで勝ったが、適性はマイル寄りだろう。次走がマイラーズCなら買いたいが、大阪杯ならちょっと考える、そんな感じ。

 ローゼンクロイツは菊3着の実績もあり、中距離から長めの方が良いこと疑いないが、脚を溜めていたことが今回の流れには有効に働いた。最後差し返せそうで返せなかったのは、鉄砲使いによるものか、一瞬の脚しか使えない一族の特徴が災いしたのか。

 サンデー産駒は勝負にやはり強い、1、2着馬と3着との差は、馬体を合わせて競り合ったことが理由の一つではないか。

 エアシェイディのインをついた競馬はよかったが、単騎で抜け出したぶん損をしたのでは? 最後まで伸びきれなかった。この馬がまだ重賞を勝っていない、というのは正直驚きだが、天皇賞に向かうなどの無茶をしなければすぐにチャンスは訪れるはず。

 オースミグラスワンは前で競馬を進めたこともあったが、寿S(古馬1600万京都芝1800m)を取りこぼしたように2000m以上がベターな馬、今回はレースの流れが悪かったか。次走は大阪杯だろうか、大阪−ハンブルクCなら確勝だろうが、まだ見限ってないので宝塚記念までにはどうにかガンバッテ。


 ネイティヴハートが驚きの勝利。この馬、過去2002年〜2005年の当レースに連続出場していて、5着、1着、6着、8着、勝った03年は重馬場だったことを考えると、翌日まで残ったやや重馬場が有利に働いたことに疑いの余地はない、が、2着に1馬身差で突き抜けたのはお見事。鞍上の内田博幸騎手はこれでJRA重賞4勝目、マイネルハーティーリミットレスビッド、2着ながらも朝日杯のスーパーホーネット、馬を追わせれば日本一ではなかろうか。

 2着のコパノフウジンは先行から直線抜け出し、ほとんど初重賞勝ちを手にしつつあった、実に惜しかった。芝ダート問わない短距離での堅実な活躍は素晴らしい、が、戦績を眺めると左回りの2戦はともに大敗している、そのあたりが本番で恨めしい話だ。

 3着はすっぽり空いたインを通り、出遅れて最後方追走のシンボリグランが伸びてきた。4歳で58kgを背負ってこの競馬、高松宮記念の最有力候補なのは間違いない。先行してよく、末を生かす競馬も悪くない。G1クラスがこぞって引退した今、短距離界をリードする存在としての活躍を期待したい。ただ、血統や実績を眺めると、早い時計の競馬があまり良くなさそうに見えるのは、たいへん不安ではあります。

 4着に2番手のアイルラヴァゲイン、アタマ差5着に逃げたギャラントアロー、ギャラントは交わされてからもよく頑張ったが、やはり坂が響いたか。アイルは引っかかってあの位置取りとか、クリスマスローズS、マーガレットSの圧勝ぶりから、能力があることは間違いない。幸いにして今年からスプリント路線が整備されたので、そこでの飛躍を期待したいところだ。

 シーイズトウショウマルカキセキは馬体重の増減が激しすぎた。中2週の本番までに立て直せるのか……