皐月賞回想

 ディープインパクト強かったですね、以上。

 ……いやいや、これではいくらなんでもやる気がなさ過ぎる。よりによって狙った馬たちが12、9、16、10、4着と散々な結果になった敗因を探さねばならぬ。

 勝ったディープインパクトはスタート出遅れの激しい不利があって最後方から始まったが、向こう正面から徐々に進出していって、4コーナーでは外を回して、直線を向いたときには2番手の一線につけるという荒業。これで直線他馬を突き放すあたりなど、まるでナリタブライアンの競馬です。

 かの三冠馬になぞらえたように、まずもって自身に群を抜いた実力がなければ出来ない戦法と結果で、これはもうよほどの事がないとダービーは確実。順調に行けば無敗の三冠馬という偉業も夢ではない……というより、かなり濃厚であると言わなければならないでしょう。

 勝ち時計は1:59.2、上がりが34.5秒。一見すると1:59.2は歴代の皐月賞の時計では早い方ですが、9RのベンジャミンSが1:47.2、10Rの卯月Sが1:33.0でどちらも前が残る競馬、ということから推測すると、さして早い時計とはいえません。出走馬中10頭が35.0秒を切る脚を使っていることからわかるように、スロー気味で上がり勝負の展開でした。

12.1-11.0-11.9-12.2-12.4-12.6-12.5-11.8-11.4-11.3

 中山芝2000mコースは、スタート〜1コーナー入口がおおよそ400m、そこから2コーナー出口までが約500m、バックストレッチが約300m、3コーナー入口〜4コーナー出口までが約500m、直線が約300mという形状になっています。

 最初2Fは直線の多頭数での先手争いで(12.1-11.0)とまあこれくらいの数字。そこから1コーナーを回って先団の隊列が定まったあたりから(11.9-12.2)と徐々にペースが落ちて、向こう正面から3コーナーを回るまでは(12.4-12.6-12.5)とゆるい流れに。出遅れたディープインパクトが向こう正面で最後方からポジションを上げて行けたのは、周囲がゆっくりと走っていた、という恩恵もあったとみてとれます。

 3コーナーでディープが中団外に進出したあたりから、前に行った馬たちも動き出して(11.8-11.4)とペースは急に上がっていきますが、それまでがスローであった為に、後ろの馬も詰めていって、馬群はバラけず5馬身くらいの間に固まって直線に。こうなると最後は速い脚を繰り出せる馬でなければ勝ち負けになりません。一番速い脚を持っているディープが勝つのは当然のことで、スローで上がりの競馬はサンデーサイレンス産駒の最も得意とする展開でありました。

 皐月賞は前残り、という過去のデータは事実ですし、中山芝2000mというコース形態からも先行策が有利なのは間違いではありません。今年の皐月賞の展開ははっきり言って10年に一度。ではディープがマグレで勝ったのか? というとそれはない。去年のような展開でアニキのような位置にいればさすがに勝てなかったと思うけれど、スペシャルウィークで唇を噛んだ悔しさを名手は確かに覚えていたし、今年はセイウンスカイもいなかった。展開の利もあったにせよ、ディープインパクトは文句なく強かった。

 今年逃げたのはビッグプラネット、というより、ここで重要になってくるのは鞍上。果敢な策を打つこともなく、蓋を空けてみればやはりのあの逃げ。ワタクシはビッグプラネット出遅れ→コンゴウリキシオー藤田の逃げ、を考えていたのですが、まるで夢と消えてしまいました。

 ワタクシは、といえば、◎のヴァーミリアン。もしユルい逃げになったとしてもデムーロなら早め先頭で行ってくれる! と期待していましたが、まずスタート一息。これだけならまだ挽回する余地があったと思うのですが、1コーナーにさしかかったときに外から果敢にやってきた⑯アドマイヤジャパンに先に前のポジションをとられてしまう展開で、馬群の最内ド真ん中。これではどうしようもない。騎手のコメントを聞いてみたいところです。

 2着のシックスセンスは展開なりの競馬。これが四位騎手の強いところでもあるが弱いところでもあります。馬は常に出遅れて上がり1位か2位を計上していた戦績からも、くしくもスーパー競馬でi先生が指摘したとおり、出遅れなければもっと着が上がっていい馬であったし、先に述べたように、今回は一団で上がりの速い馬が勝つ展開でもあった。どちらかというと恵まれた形。出遅れない競馬をもう一度見たい。

 3着アドマイヤジャパンは、今年に限ってはその位置取りが災いした。ワタクシは軽視していたけれど、はるかに強い馬でした、反省。ディープがいなければダービーの有力馬だけど、勝負付けは完全に済んでいる。

 毎日杯ローゼンクロイツは9着と不甲斐ない結果。後方追走で、切れる脚を持っている馬がこの着順なのは、直線で前にシックスセンスがいたことと、さらに内からスキップジャックにスペースを獲られて追い出しに響いたか。